2025. 11. 06 Thu
このたび、寄本恵輔先生より、「重症筋無力症かけはし基金」のクラウドファンディングに向けて、温かい応援メッセージをお寄せいただきました。
患者と医療のあいだに“かけはし”を築こうという本基金の趣旨に深く共感してくださり、心から励まされるお言葉を頂戴しました。
以下に、寄本先生のメッセージとプロフィールをご紹介いたします。
重症筋無力症(Myasthenia Gravis: MG)は、神経筋接合部の自己免疫異常によって筋力低下を生じる疾患であり、この十数年で、抗体の種類や病態に応じた分子標的治療薬の開発が進み、症状コントロールの可能性は大きく広がりました。
しかし現実には、診断までに長い時間を要する症例、未知の抗体により進行する病態、さらにはウートフ現象(Uhthoff’s phenomenon)などによる日常的な症状悪化に直面する患者が今なお存在します。加えて、MGはしばしば就学・就労・結婚・妊娠・子育てといった重要なライフステージに発症することが多く、再発への恐れや社会的理解の乏しさが、患者の人生設計に大きな影響を及ぼしています。症状が目に見えにくいため、周囲に理解されず孤立してしまうこともあり、その背景には医療者・社会双方の「見えない疾患」に対する想像力の不足があります。
このような現状に対して、「重症筋無力症かけはし基金」は、患者自身の経験を医療・研究・教育の現場に届け、患者の声を社会と医療をつなぐ”新しい知の基盤”として可視化する取り組みです。この構想は、医学の枠を超え、患者と医療者が共に学び合う文化を育てるものとして極めて意義深いと考えます。
私は、神経筋疾患のリハビリテーションを専門とする立場から、本基金の設立趣旨に深く賛同し、またその理念と活動を心から応援しています。患者の声を出発点に医療を再構築していく姿勢は、すべての医療分野に共通する原点であり、この活動が将来、より包括的で人間中心の医療を築く”かけはし”となることを強く期待いたします。

寄本 恵輔 先生
国立精神・神経医療研究センター病院 身体リハビリテーション部 第1理学療法室 主任。人間科学修士(早稲田大学)。専門理学療法士(小児・呼吸・心血管・糖尿病・神経)、認定理学療法士(神経障害・呼吸・代謝)、呼吸療法認定士、介護支援専門員。
神経筋疾患を中心に、急性期から在宅まで一貫したリハビリテーションを実践し、患者のライフステージに寄り添った支援に取り組んでいる。日本難病ネットワーク学会 評議員、日本神経難病リハビリテーション研究会 世話人、東京都理学療法士協会 代議員として、理学療法の臨床・教育・政策連携を推進している。また、鹿児島県離島、ネパール、中国など医療資源が乏しい国内外で神経難病および呼吸リハビリテーションに関する講演・教育活動を継続し、専門職の均てん化と国際的知識普及に尽力している。
研究活動においては、科学研究費補助金(科研費)をはじめとする公的助成を複数採択し、さらに呼吸リハビリテーション機器の安全性評価や支援技術に関する特許を取得するなど、臨床現場で生まれた課題を研究開発・社会実装へとつなげている。医療現場に根ざした患者中心のリハビリテーションを基盤に、多職種・行政・患者会を結ぶ協働モデルの構築を通じ、神経難病医療の未来を拓いている。
