指定難病である希少な自己免疫疾患
重症筋無力症(Myasthenia Gravis、以下MG)は、指定難病に定められている自己免疫疾患です。免疫の異常によって神経から筋肉への信号伝達が阻害され、筋力低下や易疲労性などの症状が現れます。手足の運動や移動などの支障に留まらず、呼吸や食事にも影響が及び、症状が悪化した場合、人工呼吸器や胃ろうの設置、車いすの使用が必要となることもあります。
発症中央値は59歳と報告されており、20代、30代の患者数は全国でわずか1,700人程度(出典:令和5年度衛生行政報告例)です。そのため、特に若い年代の患者に対する医学的知見や社会的認識は限られたものとなっています。
症状の変動と他者から理解されることの難しさ
MGの症状は、眼の周囲の筋肉に表れる軽度なものから、全身に及ぶ重度なものまで幅広く、患者によって経過も大きく異なります。さらに特徴の一つとして、症状の変動があります。
外見から症状を判断することが難しく、怠けていると誤解されることも多いため、病気に対する正しい理解と配慮が不可欠です。
医療従事者にも十分に認知されていない多様な症状
MGには医学的に未解明な点が多く存在します。難病では患者が先に症状を経験し、後から医学が追いつくことが一般的ですが、現場ではその逆で、医学的に解明され医学書に記載されているものだけが「存在する症状」とみなされがちです。そのため、患者が実際に訴える症状と、医療従事者が想定する「MGの症状」との間に大きなギャップが生まれています。
健康な人でも強い疲労時には集中力が低下することがあるように、MG患者も症状による易疲労性から頭がボーっとする時があります。しかし、認知機能の低下はMGの症状として医学書に記載されていないため、医療現場ではMGとは無関係とみなされ、「精神的な問題」と片付けられることもあります。
※ また、筋力低下がどの部位に現れるかは患者によって異なりますが、その多様性のメカニズムは十分に解明されていません。
このようなギャップを起因として、典型例から外れる患者は、MGの診断にたどり着くまでに何年もかかる状況に陥ることがあります。また、MGの症状ではないと否定される不安から、患者は症状を訴えること自体をためらうようになり、結果として患者と医療従事者の間での相互理解が妨げられる要因にもなっています。
重症化を防ぐには早期の治療が重要
MGは眼症状のみの眼筋型として発症することが多く、発症後2年以内に全身型へと移行していくとされています。そのため、重症化を防ぐためには早期診断・早期治療が行われることが非常に重要です。
しかし、MGは症状が多様である上に、感度の高い検査方法が限られています。診断の遅れは重症化のみならず、患者の孤立や不安感を募らせる原因にもなり得ます。これらの結果として退学や退職を余儀なくされる患者も少なくありません。
